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Question | A n s w e r |
レッドリストにあげられたホタル (ホタル情報交換 36:20,2014年) 2014年3月20日掲載 |
環境省版第4次レッドリストの公表が2012年8月にあり、「昆虫と自然」48巻7号でその特集が組まれていました。今回リストアップされた昆虫は870種と第1次レッドリストの約4倍にのぼっています。 ホタルでは、2007年版レッドデータブックに絶滅危惧II類(VU)にクメジマボタルとコクロオバボタルが、準絶滅危惧(NT)にミヤコマドボタルが掲載されていましたが、今回のリストではクメジマボタルが絶滅危惧IA類(CR)*に、コクロオバボタルが絶滅危惧IB類(EN)に格上げされ、イリオモテボタルもIB類に加えられました。いずれも一部の島嶼部や限られた生息地にのみ分布する種で、河川や湿地など失われやすい生息環境であることが特徴です。 なお、都道県別レッドリストでは、情報不足やその他を含めて23種3亜種がなんらかのカテゴリーで掲載されています。 *:今回より絶滅危惧I類がA類とB類に分けられた。IA類はごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの、IB類はIA類ほどではないが近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの、である。 (全国ホタル研究会編集委員長) |
ホタルの発光効率は (ホタル情報交換 35:26,2013年) 2013年5月17日掲載 |
ホタルの発光は白熱電球や蛍光灯はもとより、他の生物発光に比べても大変効率のよい発光として紹介されています。しかし、その値が見直されることになりました。 東京大学物性研究所の秋山英文准教授らのグループが、生物発光や化学発光の絶対発光量を定量的に計測できる分光計測装置を開発し、北米産ホタル Photinus pyralis の発光効率を調べたところ、量子収率(ルシフェリン1分子の反応から1光子が放出される確率)が41.0±7.4%と、従来の定説88%とは大きく異なることがわかりました。 88%という値は、1959年に、いくつかの人為的な仮定に基づき、当時の限られた測定技術によって得られたもので、後に測定に用いられた試料の純度にも問題があったことが判明していましたが、検証や追試が行われることなくそのまま用いられていました。 この研究論文は2008年にイギリスの科学雑誌「Nature Photonics」に発表(電子版は2007年12月公開)されたものですが、インターネットのホームページなどのホタルの解説ではいまでも古い値が使われていることも多いことから、今回紹介することにしました。 (全国ホタル研究会編集委員長) |
ホタルの数え方をみると「頭」と「匹」がありますが、どちらが正しいのでしょうか。 (ホタル情報交換 29:27,2007年) 2008年7月13日掲載 |
ホタルのみならず、昆虫は「一匹,二匹」や「一頭,二頭」と数えられています。これについては梅谷献二氏が『虫の民俗誌』(1986年発行)という本の中で扱っていますので、それに負いながらお答えしたいと思います。 動物の数を表すことばには「匹」「頭」「羽」があります。岩波書店の『広辞苑』第四版には、 「頭」は牛・馬・犬などの動物を数える語、 「匹」は獣・鳥・魚・虫などを数える語、 「羽」は鳥や兎を数える語 とあり、昆虫の数え方には匹を使うのが本来の姿です。 梅谷氏によると、江戸時代までは昆虫を「頭」と数えた事例はまったくなく、明治三十年代の日本初の昆虫の専門雑誌『昆虫世界』ではすでに「頭」が使用されているので、昆虫に「頭」を使用し出したのは明治中期以降らしいということです。 ちなみに昆虫関係の専門誌のひとつである日本応用動物昆虫学会の和文誌で、昆虫の数の表示がある50篇の論文を調べたところ、「頭」を用いているものが38篇、「匹」を用いているものが7篇、「個体」が5篇となっていたそうです。 言語学者にこの質問をしたら「日本語にはそのような使い方はありません」と言われてしまうかもしれません(確認はしていません。念のため)。ただ、プロ・アマを問わず、昆虫を扱っている人たち、いわゆる虫屋さんの世界では「頭」は確固たる地位を占めていますので、いずれ特殊な用法として認知されていくのかもしれません。 もし科学的な文章を書くのであれば、オス・メスがはっきりしている場合は2♂(オス)3♀(メス)と、オス・メスが不明の場合は5個体と表記するのが一番正確だと思います。 (全国ホタル研究会編集委員長) |