ホタルの書籍ガイド その5 (ホタル情報交換 25:26-30,2003年) 2007年1月13日
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 今回は科学啓蒙書,科学普及書等と呼ばれているジャンルを中心に,主に外国人により昆虫を中心に書かれた本の邦訳の紹介です。

凡例)
 本目録はタイトル,著者名,出版社名,所在地,発行年月,ページ数,定価,対象読者,簡単な内容紹介の順に並んでいます。
 対象読者は,一般→一般向けとなります。
 絶版の場合は把握できているもののみ対象読者の後に記しました。本によってはまだ流通しているものもあります。定価も必ずしも現在のものとは限りません。

おもしろい昆虫学の話
 著者: N・N・プラビリシコフ  訳者:阿部 光伸/編訳  出版社:文一総合出版,東京
 1986年9月発行,191pp.,1,200円,一般 〔絶版〕
 ※著者は旧ソ連の昆虫学者で,原書は1960年にモスクワで出版された。第一部は「うすい翅の昆虫たち」と題して鱗翅目(チョウ・ガ)を扱い,第二部は「厚く堅い翅の昆虫たち」と題して鞘翅目(甲虫)を扱っている。ホタルは第二部の4章の「日が暮れて活動しはじめるセンチコガネとホタル」で登場する。ちなみにロシアの代表的なホタル,ヨーロッパツチボタル Lampyris noctiluca のメス(翅が退化している)は《イワンの小虫》と呼ばれているそうである。
  
完訳 ファーブル昆虫記 10 (岩波文庫)
 著者:ジャン・H・ファーブル  訳者:山田 吉彦,林 達夫  出版社:岩波書店,東京
 1993年10月発行,432+51pp.,770円,一般
 ※ファーブルの『昆虫記』はいまさら紹介するまでもないだろう。ファーブルの生前に10巻までが刊行されたが,未完に終わった11巻に収録されるはずであった2章は原稿が完成していた。そのうちの一章が「つちぼたる」で,未収録の2章はその後発行された一部の『昆虫記』に収録されている。岩波文庫版もそのうちのひとつである。
  
消えゆくものたち 超稀少動物の生
 著者:ダイアン・アッカーマン  訳者:葉月 陽子,結城山 和夫  出版社:筑摩書房,東京
 1999年7月発行,295pp.,2,500円+税,一般
 ※ダイアン・アッカーマンは20代の頃から詩人として活躍し,後にネイチャー・ライターとしても高い評価を得た。本書は『月に歌うクジラ』の続編で,絶滅の危機に瀕した生物・生態系にテーマを絞って書かれている。ホタルは「愛しの昆虫」という章の中で触れられている。
  
99匹の跳ぶ、這う、かじる仲間 昆虫たちの変わった履歴書
 著者:メイ・R・ベーレンバウム  訳者:長野 敬,赤松 眞紀  出版社:青土社,東京
 1998年9月発行,357+7pp.,2,400円+税,一般
 ※著者はイリノイ大学の教授で昆虫学者で,1982年から地域ラジオ局で「脅威の昆虫たち」という短い番組を担当し,一般向けに昆虫を紹介してきた。この番組は多くの反響があり,後にイリノイ大学出版局から本にまとめる話がきた。本書は1982〜87年の放送台本をもとに書かれているが,原題の「Ninety-nine Gnats (刺すブヨ), Nits (寄生するハチ), and Nibbilers (かじるケムシ)」が示す通り,掲載されている昆虫も世間一般からは毛嫌いされているものが多い。第8章「多芸な飛行家たち」の1節にホタルが紹介されている。ちなみに本書は好評だったらしく,「続〜」「続続〜」が発刊されている。
  
甲虫の世界 地球上で最も繁栄する生き物
 著者:アーサー・V・エヴァンス,チャールス・L・ミラン/著 リサ・チャールス・ワトソン/写真
 訳者:加藤 義臣,廣木 眞達/訳 小原嘉明/監修  出版社:シュプリンガー・フェアラーク東京,東京
 2000年4月発行,201pp.,2,600円+税,一般
 ※エヴァンスはアメリカ・ロスアンジェルス自然史博物館,ミランは南アフリカ・トランスバール博物館に勤務する甲虫研究の権威。本書は「甲虫の種類」「甲虫の設計図」「甲虫−今昔」「これこそ甲虫の生活」「甲虫と人間」「ビートルフィリア」の各章からなるが,単に甲虫の紹介にとどまらず,甲虫や甲虫を取り巻く環境への科学的アプローチの大切さを訴えている。珍しい琥珀に閉じこめられたホタルの写真が見られる。
  
昆虫の四季
 著者:ギルバート・ウォルトバウアー  訳者:長野 敬,くばた のぞみ  出版社:青土社,東京
 1998年3月発行,345+27pp.,2,600円十税,一般
 ※著者はイリノイ大学の名誉教授で,長年セクロピアというガを研究してきた。本書は標題にある通り,四季に沿って昆虫を紹介している。ホタルは3章の「相手を見つけて求愛する」に登場する。
  
新・昆虫記 群れる昆虫たちの世界
 著者:ギルバート・ウォルトバウアー  訳者:丸 武  出版社:大月書店,東京
 2002年2月発行,230pp.,2,200円+税,一般
 ※著者は前記『昆虫の四季』と同じ。本書は社会性昆虫以外の昆虫の群という視点から書かれている。ホタルは11章の「つがい相手を見つける」に登場する。
  
生物千一夜物語 奇想天外な生き残り戦略 (地球物語双書5)
 著者:ジーン・K・ハンソン,ディーン・モリソン  訳者: 澄川 精吾,池田 比佐子  出版社: 新潮社,東京
 1993年4月発行,379pp.,2,200円,一般 〔絶版〕
 ※「Of Kinkajous, Capybaras, Horned Beetles, Seladangs, and Oddest and Most Wonderful Mammals, Insects, Birds, and Plants of Our World 」という長い原題が示す通り,地球上に不思議でおもしろい生物がたくさんいることを紹介した本である。著者はアメリカのサイエンス・ライター。「ホタルの光」という1節がある他,海産発光生物を紹介した「輝く海の生き物」という1節がおさめられている。
  
動物の不思議な感覚
 著者:フィタス・B・ドレッシャー  訳者:渋谷 達明  出版社:時事通信社,東京
 1980年10月発行,326pp.,1,800円,一般 〔絶版〕
 ※著者はドイツの科学ジャーナリストとして著名。新聞や放送で活躍してきた。本書は感覚とういう視点から「視覚」「温度感覚」「痛み」「匂いと味の感覚」「聴く感覚」「振動とタッチの感覚」「重力、飢餓、電気感覚」「渡り」「最近のトピック」の各章に分けて動物の感覚を紹介している。ホタルは第1章「視覚」の「光のパターンだけを見る動物」のなかで紹介されている。
  
ヘッピリムシの屁 動植物の化学戦略
 著者:ウイリアム・アゴスタ  訳者:長野 敬,石井 洋子,浜本 洋子  出版社:青土社,東京
 1997年9月発行,305+5pp.,2,200円+税,一般
 ※著者はロックフェラー大学の教授で,有機化学研究室を主宰し,フェロモンなど化学物質によるコミュニケーションの研究において世界の第一人者に挙げられる一人。本書は化学生態学という分野から生物を紹介している。第6章「化学物質と生活様式」に「ホタルの火とツチボタルの光」という1節がおさめられている。
  
虫の惑星 知られざる昆虫の世界
 著者:ハワード・E・エヴァンズ  訳者:日高 敏隆  出版社:早川書房,東京
 1972年6月発行,407pp.,2,000円,一般
 ※著者のエヴァンズはハーヴァード大学の教授で,後にコロンビア大学名誉教授となった昆虫学者で多くの著書がある。原書は1968年出版だが,訳者の日高さんが文庫版のあとがきで「昆虫のことを書いた本で,こんなにおもしろいものは,まだ他に見たことがない」と書かれているように,現在でもこの本のおもしろさはいささかも衰えていない。ホタルには「魔術を擁護するために−ホタルの物語」という1章がさかれている。
  
虫の惑星〔1〕 詐欺師のホタルと蝶のマソリンモンロー (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 著者:ハワード・E・エヴァンズ  訳者:日高 敏隆  出版社:早川書房,東京
 1994年8月発行,286pp.,580円+税,一般
 ※前記の文庫化されたもの。文庫化されるにあたって2冊に分けられホタルの章は1巻目に納められている。
  
ラ・プラタの博物学者
 著者:W・H・ハドソン  出版社:リバティ書房,東京
 1993年5月発行,210pp.,1,300円,一般
 ※著者のハドノンはアルゼンチンで生まれ,鳥類を中心に研究を行った博物学者で,32歳の時,イギリスヘ渡り,研究と著作活動を行い,後に帰化する。本書はアルゼンチンの放題な草原パンパズに生息する哺乳類から昆虫に至るさまざまな生物の記録であるとともに,優れた作家であり詩人であった著者によってつづられた動物記でもある。第13章「自然の燈火(ホタルその他について)」にはパンパズで出会ったホタルの大群が描写されている。

(全国ホタル研究会 編集委員会)

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